フィロデンドロン モンステラ 挿し木

モンステラ フィロデンドロン 挿し木のための気根|2021年夏

フィロデンドロン フロリダ 挿し木 4か月後

 フィロデンドロン「フロリダ」の挿し木の記事「フィロデンドロン フロリダ 挿し木|2021年春」@3月スタートから4か月経過しました。『1節、古枝の挿し穂』で、挿し穂選びの原則としては、全然最適ではありませんでしたが、やっぱり順調には成長できずで終了しました。『開始時期が3月末と少し早かった』こともあるかとは思いますが、とにかく失敗です。
 厳密には、小さな芽が出るところまでは確認しましたが、それ以上、芽が動きませんでした。やはり発根して、芽が出て、芽が大きく成長して、、、というサイクルを回すには、枝が古くて活力が無かったこと、そして、まだ春先で充分な生育を促す気温が足りなかったことが原因と思います。ちなみに失敗した「フィロデンドロン『フロリダ』」の親株です。増やしたくなる美しさです。フィロデンドロン「フロリダ」は、葉が肉厚であること、雪白斑でなく薄黄斑であることで、美しい葉がとても長持ちします。

フィロデンドロン-フロリダ-斑入り葉

フィロデンドロン・フロリダの綺麗な斑入り葉

アロイド価格が高騰している?

 最近、オークションのページを見ていると、アロイドと称されるサトイモ科の植物が、とても高額で取引されていてビックリします。
 アロイドとは、モンステラ、フィロデンドロン、クワズイモ等のメジャーな観葉植物達を指します。どれも珍しい植物種類ではありませんが、斑入り種が数万円から数十万円で取引されているようです。私も斑入りモンステラ、斑入りクワズイモ、斑入りフィロデンドロンなんかは一通り栽培した経験があります。もちろん斑入り種なので、安価ではありません。数万円の価格はします。ただ、数年前までは、10万円を超えることは無かったように覚えています。しかし、最近では、斑入り品種でも特に珍しい品種は、100万円近くから100万円以上の値付けがついている品種もあるようです。
 そんな最近のオークションを見ていると、さすがに庭の珍しいアロイド達をバッサリ剪定して捨てるのは勿体なく感じ始めました。。。今年は本気でアロイドを増やそうと思い立ち、その最初の記事になります。一言でいうと、「挿し木で増やす観葉植物」です。ただし、普通に書いても面白くないので、特定の焦点に絞って書きたいと思います。今回は、『挿し木のための気根』についてです。「挿し木」と「気根」がどう繋がるか?ですが、「気根」があるから、とても簡単に「挿し木」ができることを紹介します。
 「挿し木」できるメジャーな植物にアジサイがあります。アジサイの挿し木では、発根するまで、水切れなく、細かなケアが必要です。しかし、気根付きの枝を使って、適切な時期に挿し木すると、失敗するのが難しいくらい、簡単に挿し木に成功します。簡単に挿し木できるとされるアジサイより、さらに簡単です。

モンステラ、フィロデンドロンの気根

 アロイドの中で、気根を生やし挿し木で簡単に増やせる種類は、モンステラやフィロデンドロンになります。クワズイモなんかは挿し木では増やせず、子株を分離して増やします。
 最初に、庭最大の気根を誇る斑入りの「モンステラ デリシオーサ」です。何度も開花(参考記事「モンステラ(デリシオーサ)の実を食べる」)した特大株です。5mmΦ程度の太く、長い気根が多数伸びています。枝から伸びた気根が土に到達すると、そのまま土中に根を張り巡らしていきます。

斑入りモンステラ-気根

斑入りモンステラ・デリシオーサの気根

 一節当たりの気根数で定量化すると、「2~3気根/節」でしょうか?どの節を使っても、簡単に挿し木に成功できそうです。
 次に「フィロデンドロン マハラジャ」の気根です。こちらも以前に珍しい開花を紹介(参考記事「フィロデンドロン マハラジャ 開花」)した株です。モンステラほどではないですが、長年育てた大株で、かなり太い枝になっています。それでも、モンステラに比べると、気根の量は少なめです。

フィロデンドロン-マハラジャ-気根

フィロデンドロン・マハラジャの気根

 モンステラ・デリシオーサに比べて節間が短いので、単純比較しにくいですが、せいぜい「0-1気根/節」ですね。株サイズ影響も大きくありそうですが、フィロデンドロンよりモンステラの方が気根を出しやすいように思います。

気根とは?

 順番が前後しますが、そもそも気根とは?の確認です。気根の役割は大きく2つです。

  1. 空気中の水分・空気の吸収
  2. 植物を支える支柱

気根の機能1 「水分を吸収する根」

 気根の最大の機能は、「水分を吸収する機能」であり、土中の根と同じです。空気中の水分を求めて気根を生やすので、高温多湿な梅雨時に気根が生えやすいと言われます。
 気根は、茎から伸びていき、土に到達すると、そのまま土中に根を生やします。こうなると、気根ではなく、ただの根です。これが普通の気根の成長の流れだと思います。茎から気根が発生⇒空気中の水分を求めて伸びていく⇒土に到達して土中の水分を求めて(気根でなく)根になる、、、が気根の理想的な一生?です。
 では、気根が水中に入るとどうなるか?斑入りモンステラの葉が綺麗なので、花瓶に挿しておいた時の結果です。

モンステラ-気根-水中

花瓶に挿したモンステラの茎

モンステラ-気根-水中

花瓶に挿したモンステラの茎の気根が大成長

 結果は、水中の気根は、びっくりするくらい伸びます。空気中では、枝分かれすることなく、直線的に伸びますが、水中では、枝分かれして、密な水中根を作ります。まさに土中で根を生やすのと同じです。先に紹介した極太でないモンステラの枝でもこれだけ気根が枝分かれして伸びていきます。高温多湿な梅雨時に気根が生えやすい、、、というのも理解できるかと思います。

気根の機能2 「植物を支える支柱」

 気根が伸びて、支柱となります。気根は土中に生えるひげ根と違い、固くしっかりしていますので、多数の気根が集まれば、植物を支えることができます。支柱として支える、とは少しずれますが、他の植物なんかに絡みつくことでも植物を支えることができます。
 モンステラは、つる植物のため、この気根を絡ませることで、自らを支えて成長していきます。大きく仕立てられたモンステラは、ヘゴの支柱なんかに、気根を絡ませて販売されています。
 ただし、植物を育てる機能としては、機能1「水分を吸収する根」に比べると、大きな機能ではありません。支えるだけなら、支柱を立てればいいだけなので。。。例えば、気根によって支えられた株姿のように、植物の姿をデザインとして作り込む!ためには重要な機能と言えます。

挿し木における気根のメリット

 気根の『挿し木』に関わる機能は、もちろん「水分を吸収する根」です(挿し木については、姉妹サイトの「野菜・果物編」でタグ記事をいくつか挙げていますので、ご参照ください)。気根のない植物の挿し木と、気根のある植物の挿し木での比較から、挿し木の大まかな流れと、挿し木における気根の意味を確認します。

比較例>アジサイの挿し木

 一番メジャーな挿し木できる植物はアジサイかと思います(個人的な意見ですが…)。アジサイの挿し木の流れを書きます。

  1. 挿し木枝を切断する
    【注意】挿し穂切り口がつぶれると水揚げしにくくなる
  2. 挿し木枝を水揚げする
  3. 挿し木枝を土に挿す
    【注意】挿し方が乱暴だと、挿し穂切り口がつぶれて水揚げしにくくなる
    【注意】挿し穂切り口を土との接触が不十分だと水揚げしにくくなる
  4. 挿し木枝の土を湿らしたまま維持する
    【注意】気温にもよるが、水切れするとダメージは大きい
  5. 挿し木切り口近傍や節から発根する
    【注意】最初は繊細な根が発根するので、枝が動く等の衝撃で根が切れやすい
  6. 挿し木枝からの根が土に張っていく
  7. 苗として、肥料をやり、土が乾いたら水をやるサイクルで育てる

 注意点に挙げた要点は、気根のないアジサイの挿し木では、水を吸収する能力が、枝の切断面しかないことです。そして枝の切断面の水の吸収能力が低いということです。枝の切断面はもちろん根ではないので、当たり前と言えます。この発根前の切断面で水分吸収する時期を乗り切るために、水切れは絶対にNGです。通常の植物の挿し木では、この流れが当たり前です。

気根をもつモンステラ、フィロデンドロンの挿し木(気根のない挿し穂)

 あえて、「気根のない部分」のモンステラ、フィロデンドロンの挿し木で記載します。

  1. 挿し木枝を切断する
    【注意なし】枝が太く頑丈で、挿し穂の切り口はつぶれにくい
  2. 挿し木枝を水揚げする
  3. 挿し木枝を土に挿す
    【注意なし】挿し方が乱暴でも、挿し穂の切り口はつぶれにくい
    【注意】挿し穂切り口を土との接触が不十分だと水揚げしにくくなる
  4. 挿し木枝の土を湿らしたまま維持する
    【注意なし】挿し穂の水切れに対する耐性が強く、水切れによるダメージを受けにくい
  5. 挿し木切り口近傍や節から発根する
    【注意】最初は繊細な根が発根するので、枝が動く等の衝撃で根が切れやすい
  6. 挿し木枝からの根が土に張っていく
  7. 苗として、肥料をやり、土が乾いたら水をやるサイクルで育てる

 アジサイで記載した注意点が少し減りました。減った要因は、植物としての枝の強さです。アジサイの挿し穂を放っておくと、挿し穂の葉がすぐに萎れます。「すぐに」というのは、早くて1時間程度、長くても1日もすると、萎れるくらいです。しかし、モンステラ、フィロデンドロンともに少々の水切れでも全く葉は影響を受けずに萎れずにいます。アジサイに比べて、モンステラ、フィロデンドロンともに葉の厚みが大きくしっかりした葉になりますので、当然です。

気根をもつモンステラ、フィロデンドロンの挿し木(気根のある挿し穂)

 目的の「気根のある部分」のモンステラ、フィロデンドロンの挿し木で記載します。

  1. 挿し木枝を切断する
    【注意なし】枝が太く頑丈で、挿し穂の切り口はつぶれにくい
  2. 挿し木枝を水揚げする
  3. 挿し木枝を土に挿す
    【注意なし】挿し方が乱暴でも、挿し穂の切り口はつぶれにくい
    【注意なし】水を吸収できる気根から水揚げできるので、挿し穂切り口と土の接触を気にしなくてもよい

  4. 挿し木枝の土を湿らしたまま維持する
    【注意なし】挿し穂の水切れに対する耐性が強く、水切れによる大ダメージを受けない
    【注意なし】水を吸収できる気根があるので水を吸いやすく、水切れダメージを受けにくい
  5. 挿し木切り口近傍や節から発根する
    【注意なし】気根はしっかりした根であり、切れたり、折れたりしにくい
    【注意なし】切断面だけでなく、気根からさらに発根が進む
  6. 挿し木枝からの根が土に張っていく
  7. 苗として、肥料をやり、土が乾いたら水をやるサイクルで育てる
    【メリット】根があるので、最初から「乾いたら水をやる」の基本サイクルで育てられる
    【メリット】根があるので、最初から肥料を与えて成長を促進させて栽培できる

 アジサイで記載した注意点は全て無くなりました。アジサイの通常の挿し木方法で考えると、全ポイントで、モンステラ、フィロデンドロンは挿し木しやすいことになります。アジサイの挿し木の最大のポイントは「切断面から発根するまでは水が切れないように、倒れないように要注意で管理」です。一方で、気根のあるモンステラやフィロデンドロンでは、最初から水を吸収できる気根があるため、注意する必要が全く無くなります。もちろん、少々の水切れでは萎れない、植物としての挿し穂の強さも要因になっています
 さらに追加のメリットとしては、根の変わりになる気根があるので、最初から基本的な植物の育て方のルーティーンを回せることです。
 具体的には、アジサイの挿し木で最初に使用する土は、例えば、鹿沼土の細粒のような無菌、無肥料な土で、発根確認までは、肥料を与えずに水だけで育てます。発根を確認してから、肥料を与えたり、肥料分のある土に植え替えて、苗として大きく成長させます。対して、気根のあるモンテスラ、フィロデンドロンの挿し木では、最初から根の機能がある気根があるため、肥料分のある土でも挿し木できます。もちろん、挿し木の王道としては、「無菌・無肥料で根を出してから、肥料分のある土にする」ですが、初から肥料分のある土で挿すことで、植え替えの手間を減らすこと、素早い生育が望めることと大きなメリットが増えます。梅雨時のような挿し木最適期では、十分にトライする価値のある大きなメリットです。

まとめ

 気根のあるモンステラ、フィロデンドロンの挿し木において、気根による大きなメリットがあることを、通常の気根のない植物(アジサイ)の挿し木と比較しました。初から水分を吸収できる気根があることと、水切れに対する挿し穂の耐久性の高さの2点において、失敗する要素があまり見当たらないことが分かりますもちろん、元気な挿し穂を使うこと、多数の気根がある挿し穂を使うこと、梅雨時期等の最適期に挿し木すること、といった基本的なことを守るのは大前提です
 最後に、メリットあればデメリットです。何もないと言いたいですが、唯一のデメリットは、1本の挿し穂に必要な鉢が大きくなること(1つの鉢に複数挿しが難しいこと)かなと思います。アジサイの挿し木は1つの鉢に何本も挿せるのに対し、気根が鉢の体積を取るので、気根のある挿し穂を一鉢に何本も挿すのは難しいです。ただ、、、アジサイの挿し穂を複数挿すのは、挿し木失敗時に対する保険ですが、気根付き挿し穂は失敗が極めて少ないことを考えると、やっぱりデメリットというほどのデメリットではないですね。

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