ツワブキ

ツワブキ 秋芸(星龍獅子、火山烽、緑翠剣)|2020年秋

ツワブキの芸

 園芸を始めたきっかけがアジサイだとしたら、ツワブキは古典園芸植物を始めるきっかけになった植物です。様々な葉芸はもちろん、花も変わり花があり、色々と楽しる幅のある植物です。アジサイと違って大株になりませんし(何でもアジサイと比較しても意味がないのですが…)、観賞する上で、常緑であることも嬉しい点です。
 ただ、品種が多いほど、品種ごとの育て方の特性は異なります。同じツワブキだからと、同じ管理をしていたら、稀少性のない普及品種のみ増えてしまい、庭を占拠されてしまいます。
 ツワブキの芸を簡単に分類すると、まず葉芸と花物に分かれます。また紹介しますが、ツワブキの花も八重咲、千重咲から変わり咲きと様々です。今回は葉芸、特に秋に見られる秋芸を紹介したいと思います。

ツワブキ 星龍獅子

 秋芸が顕著な星龍獅子です。本を見て調べると、葉の形状変化が、石化、フギレ、子宝…と多種あり、斑入りが星斑になるものとあります。細かい分類はともかく、見ての通りです。見事な芸です。普通のツワブキしか知らない人には、とてもツワブキには見えません。このような芸は春先には見せませんので、まさに秋芸だと思います(春先はもう少し幅広い葉になります)。

ツワブキ星龍獅子-秋芸

ツワブキ「星龍獅子」の秋芸

ツワブキ星龍獅子-秋芸

ツワブキ「星龍獅子」の秋芸

ツワブキ 火山烽

 次は火山烽です。これは秋芸でも春芸でも見られますが、葉が猪口芸といって、中央が凹んだ葉です。全葉に安定して発現しませんが、普通の猪口葉から、まるで漏斗のような葉、中央の凹みから昇竜芸という大きな突起が出る葉と、次に出る葉が楽しみになるものです。安定した芸も良いのですが、火山烽のように芸の不安定性も育てていて楽しめる要素に感じます。猪口葉のツワブキの品種は、この火山烽のみと言われています。
 これは猪口葉です。

ツワブキ火山烽

ツワブキ「火山烽」の猪口葉

 これは昇竜芸です。

ツワブキ火山烽-昇竜芸

ツワブキ「火山烽」の昇竜芸

 昇竜芸を横から見ると、こんな感じです。

ツワブキ火山烽-昇竜芸

ツワブキ「火山烽」の昇竜芸

 漏斗葉を探しましたが、無かったので、また今度。


(観葉植物)シダ オオタニワタリ 斑入り 3.5号(1鉢)

ツワブキ 緑翠剣

 次は緑翠剣です。これも名の通り、剣のような葉になるのは秋になります。秋以外では、もう少し幅広い剣になります。ツワブキとして紹介していますが、説明がなければ、ツワブキには全く見えません。

ツワブキ緑翠剣

ツワブキ「緑翠剣」

ツワブキ緑翠剣

ツワブキ「緑翠剣」

育てたいツワブキ

 ツワブキは、千差万別と言っていいくらいの葉芸と、花物も多種類あり、とても育てたくなる、集めたくなる植物です。今回は、所有する株の中から、面白そうな秋芸の葉芸を紹介しましたが、まだまだコレクション欲を満足させられないほど種類があります。
 ただし、珍しい品種には注意点があります。花物は比較的安定していますが、葉芸は不安定なものが多いです。不安定な要素は大きくは、「芸を見せる季節」、「芸の強い株と弱い株」、「株の成長度」、「栽培環境」「品種ごとの芸の特性」の5つになります。

ツワブキ小田絞

ツワブキの小田絞り(通年芸)

  • 芸を見せる季節
    年中変わらず芸を見せるもの、春芸として春先の新葉に顕著に芸を見せるもの、今回紹介した秋芸として、夏が終わった後の秋の新葉に顕著に芸を見せるものに分かれます。目を見張るような形態変化を見せる芸ほど、春芸、秋芸と季節限定の芸が多いように思います。
    一年を通して芸を見れるのも嬉しいです。しかし、それ以上に春、秋の季節に合わせて、新葉が面白い芸を見せてくれる方がより嬉しい気がします。
  • 芸の強さ
    蛍斑や刷毛込み斑のような斑入り品種はもちろん、形態変化を示す品種も株ごとの強い、弱いがあるものが多いです。一番ポピュラーな蛍斑を示す品種「天星」でも季節因子を除いても斑が多い株、少ない株があります。入手時は、きっちりと芸を確認できる株を選ぶことが大事です。育てている時は、植え替えや株分けの時に、できるだけ芸の強い芽を選別することです。私は、芸の弱い芽を取り除くように、植え替え、株分けするようにしています。
  • 株の成長度
    斑入り芸は、株サイズの影響少なく、芽の持つ斑の強さに依存して、芸が出やすいです。しかし、大きな形態変化を示す葉芸は、小株では出にくいです。植え替え、株分け時に小さな株を作らないようにすることが大事です。
  • 栽培環境
    栽培環境、すなわち株を日陰、日向、半日陰のどこで育てたかも重要です。できるだけ日光に当てた方が形態変化を示す葉芸は出やすいと感じます。斑入り品種では、春先に黄金葉を見せる品種は、日光をよく当てた栽培環境だと、完全な黄色葉になります。一方で、あまり日光を当てていないと、せいぜい黄緑どまりになります。
    ツワブキは日陰で育つ植物の印象がありますが、日陰でも育つという意味では正しいです。しかし日陰で育ててこそ、芸が顕著に出る品種は聞いたことがありません。
    ただし、夏場の直射の日光などの強すぎる光は害しかありませんので、注意が必要です。株にダメージを与えない範囲で、できるだけ日光を当てる時間を年中通して確保することが大事です。
  • 品種ごとの特性
    もともと芸の発現が不安定な品種、安定な品種と、品種の特性は千差万別です。もちろん、芸の発現が安定で、凄い芸を示す品種が一番嬉しいです。実際のところは、そんな品種は稀だと思います。

 安定すぎる芸は普及種として稀少性が失われて価値がなくなる(見慣れてしまう)のが、ツワブキの品種の実態のように感じます。ツワブキを収集を楽しむには、品種を確認して入手するだけではダメです。入手してからの管理、育て方も重要です。不安定ながら凄い芸を、芸を見せる季節を理解し、芸が強くなるように芽を選別して、大切に育て続けることが育てる側の楽しみと思います。

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