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アジサイの覆輪花 簡単に楽しむ
「大島緑花」のような分かりやすく印象的な花に比べて、今では珍しくなくなりましたが、庭の古参の八重の覆輪花のアジサイを紹介します。
覆輪花の性質は、日本に自生しているヤマアジサイの品種としては、一重の赤覆輪が綺麗な「清澄沢」、八重の赤覆輪とされるが綺麗に発色しにくい「羽衣の舞」があります。川島榮生著の『アジサイ百科』というヤマアジサイを中心にたくさんの品種が掲載されている本を持っていますが、明確な覆輪花はこの2種くらいしか見つけられません。。。一方で、最近の母の日の花屋で、たくさん見かけられる派手なアジサイ達には、八重の額咲き、手毬咲きの綺麗な覆輪花を多数見かけます。
数年前の私は、毎年作出される最新品種を追いかけており、八重咲×手毬咲き×白覆輪の「万華鏡」、綺麗な両性花を含む八重咲×額咲き×白覆輪の「銀河」に感動して喜んで育てていました。が、、、「万華鏡」「銀河」ともに上手く育てられずに枯らしてしまいました。。。アジサイ栽培歴=園芸歴くらい長いはずなのにです…。すぐ隣では別品種のアジサイが元気にどんどん大株になっていくのにです…。
私の栽培技術が、ただ単純に、最新品種を元気に育てるには及んでいないことは一つの結論です。しかし、私の考えたもう一つの結論は、最新の派手で複数の特徴をもった品種は、昔の庭木のアジサイと同じ要領で育てられるほど、強くないのでは?、、、という考えです。
そう考えると、我が家の庭に残っているアジサイの品種は、多大な注意を払わなくても、簡単に大株に育て上げて楽しめる品種が選別されて残っていると言えます。私のアジサイの最大の好みは、「八丈千鳥」「大島緑花」のような原種と言えるアジサイ品種に結局は落ち着いているのですが、たまには原種では出せない作出された特徴をもつ品種を紹介します。最新品種ではありませんが、簡単に大株に成長させて、多数の花を簡単に楽しめる品種であることは、5年以上の栽培経験から保証付きなので参考いただければと思います。
ガクアジサイ「ピーターパン」 開花
加茂花菖蒲園作出で、白覆輪×八重額咲の「こんぺいとう」という品種が販売された後に、その後継品種?のような形で、次に紹介する「ティンカーベル」と同時期に販売されたと思います。
「ピーターパン」は、「こんぺいとう」「ティンカーベル」と、白覆輪×八重額咲の特徴は全く同じです。
白覆輪は、きっちり出やすいです。「城ケ崎」のような白覆輪のない八重額咲きのアジサイと間違えられることはありません。
装飾花数がとても多いことに加えて、両性花が先に枯れて脱落しやすいため、八重の額咲きというよりは、半手毬咲きに見えるほどです。ヤマアジサイの「七段花」も両性花が咲きに枯れ落ちやすいので、同じ特徴と言えます。品種を紹介する最大の特徴にはなりませんが、地味に綺麗に花を楽しみやすい特徴です。同じく加茂花菖蒲園作出の「舞孔雀」は、装飾花が少なめで、両性花が発達するタイプなので、額咲き好きの私としては、面白いと感じますが、綺麗だなーとは感じにくい品種です。個人的な偏見かもしれませんが、、、アジサイの花の最大の観賞ポイントは、やっぱり装飾花であって、両性花ではないと思っています。
もう一つの「ピーターパン」の特徴は、花が立体的でとても見栄えがします。これも品種の最大の特徴ではありませんが、装飾花が綺麗に見える重要な特徴です。
発色は、青寄りです。ピンクに咲いたことは一度もありません。酸性土の色とされる青から中性土の色の紫の色幅になりますが、特に土の酸度を酸性側に調整していません。「ピーターパン」が青から紫で、次に紹介する「ティンカーベル」が桃から紫に発色するように作出されたと推定されます。
アジサイ 発色の考察 土の酸度の調整? 肥料の調整?
アジサイの色については、土の酸度、厳密には土中のアルミニウムイオンや、リン酸量が主要因と言われます。青アジサイの肥料、ピンクのアジサイの肥料、と専用の肥料なんかも販売されています。ただヤマアジサイに始まり、多数のアジサイの品種を育ててきた中での私の結論は、肥料での調整以上に花の発色に強く影響することは、品種ごとに色の変化幅が決まっているということです。色が変化しない白色や緑色のアジサイは別として、
- 青から紫まで変化する品種
- 青から桃まで大きく変化する品種
- 桃から紫に変化する品種
の3択です。青から紫までの変化幅のアジサイを綺麗な桃に発色させることは不可能だと思います。桃から紫までの変化幅のアジサイを綺麗な青に発色させることも不可能だと思います。
今回紹介する3つのアジサイに当てはめると、「ピーターパン」は青から紫まで、「ティンカーベル」は桃から紫まで、「きらきら星」は青から桃まで変化する品種になります。
今回紹介しない庭のアジサイでは、「森の泉」「泉鳥」は青から紫まで変化(紫にすることも難しいくらい青に発色します)し、「舞孔雀」「ウェディングブーケ」「モナリザ」は青から桃まで変化する品種です。「コサージュ」「雨に唄えば」なんかは、桃から紫までに変化する品種で、青い「コサージュ」なんて見たことがありません。
こういった情報は、何年も同じ品種を育てて分かる経験者のみの情報だと思います。発色の自由さはアジサイの大きな特徴とも言えますが、私は、それぞれの品種には、それぞれの得意とする(綺麗に花を魅せられる)色が決まっていると感じています。もちろん、多大な手間をかけたら、どんなアジサイも青から桃まで変化させられるかもしれません。ただ、普通の趣味者の範疇で、色の振り幅を変えることに力を尽くすくらいなら、品種の最も綺麗に見える色を知り、そこに合わせていくのがいいのかなと思います。
丁度よい写真が無いのですが、同じ株の中で、青花と紫花が混じっているもの、紫花と桃花が混じっているアジサイを見たことがありませんか?同じ土で育ち、同じ遺伝子を持った株でも色幅が振れるのがアジサイです。繰り返しますが、各品種に最適な色を見つけて、その色に合わせて育ててやることがアジサイの色を楽しむ最大のポイントだと思います。青から桃に大きく振れる品種なら、個人個人の育てやすい土と肥料で、とにかく元気に育てて、花色の調整ではなく自然な変化を楽しみたいです。もちろん、白花・緑花には、こんな悩みは発生しませんが。
ガクアジサイ「ティンカーベル」 開花
話がアジサイの色に逸れましたが、品種紹介に戻ります。「ピーターパン」と兄弟花のような位置づけで販売されたと覚えている「ティンカーベル」です。こちらも、白覆輪×八重額咲きですが。。。
白覆輪が出ているような出ていないような。。。もちろん何年も育てた経験としてですが、「ティンカーベル」の白覆輪は大変不安定です。間違いなく言えることは、「ピーターパン」ほどクリアな白覆輪にはなりません。不安定が過ぎると、一つの装飾花のみ?白覆輪になったりします。これが固定した特徴になると大変面白いのですが。。。
白覆輪の点ではイマイチの「ティンカーベル」にも、「ピーターパン」の立体的な装飾花、両性花が脱落しやすい、のような隠れた特徴があります。意外にも、「ティンカーベル」は、新枝咲きしやすいことです。花後に剪定せずに強いシュートを放っておいたら、旧枝咲きのアジサイでは本来、咲かない季節に花が咲いていた!なんてことが、「ティンカーベル」では何度かあります。もちろん品種の特徴として四季咲きとされる「八丈千鳥」「三宅常盤」ほどではありませんが、長年育てていて初めて分かる「ティンカーベル」の特徴です。それでも、花の美しさでは、やっぱり「ピーターパン」が勝りますね。
ガクアジサイ「きらきら星」 開花
栃木県農業試験場が作出したアジサイの品種です。加茂花菖蒲園より「こんぺいとう」「ピーターパン」「ティンカーベル」「アラモード」が作出・販売された頃に購入したと記憶しています。加茂花菖蒲園の品種ばかりでは面白くないので、白覆輪×八重咲の流行の特徴は同じながら、なでしこ弁が追加されて更に派手な花だったことで入手しました。
ちなみに右下に装飾花の一輪が写り込んでいますが、この装飾花は、加茂花菖蒲園作出の「おはよう(入手時の名前はフラメンコ)」になります。「おはよう」も花弁の枚数が多く豪華な装飾花ですが、「きらきら星」の装飾花が「おはよう」に負けないくらいボリュームのある花であることが分かります。
白覆輪が派手で発現しやすい特徴は、「ピーターパン」に勝る高性能と言えます。「ピーターパン」の白覆輪は外周の花弁は強く表れ、内周の花弁は弱くなる傾向があります。しかし、「きらきら星」の白覆輪は、外周の大きな花弁から内周の小さな花弁まで、全て強く白覆輪が出るため、より派手に見えます。
もちろん、育てやすさは今回紹介する品種の中で全く変わりなしで、簡単にたくさんの花を毎年楽しむことができます。立体的な装飾花が好みであれば「ピーターパン」、派手な白覆輪&なでしこ弁のボリューミーな装飾花が好みであれば「きらきら星」かなと思います。
ガクアジサイ「キララ」 開花
最後に白覆輪でもないのですが、「きらきら星」の名前繋がり?で「キララ」を紹介します。
見ての通り、覆輪花ではありません。白色の花弁の八重額咲きの花です。特に分かりやすい固有の特徴はありません。細かい特徴になりますが、よく似た有名品種の「墨田の花火」に比べ、細弁で、弁の形が不安定なことが特徴と思います。
私にとっては、遠い昔に、初めて京都府舞鶴市の舞鶴自然文化園のアジサイ展に行った時に購入した記念すべき品種です。一緒にアジサイ展に行った私の母は、とても気に入って庭に地植えして10年以上経ちます。後で知ることになりましたが、この「キララ」も加茂花菖蒲園作出の品種で、かなり古い品種のようです。この展示会では、数年後にとても有名になる「ダンスパーティー」も販売されていたのを思い出します。自分の実家の庭ですが、少し派手めな「ダンスパーティー」が咲き乱れるよりは、やや地味な美しさと言える「キララ」が咲き乱れているところは、私と私の母の趣味なのかなーと思います。
覆輪花のテーマで記事を書きましたが、やっぱり派手な覆輪花ばかりでは、嫌になりますので、最後にシンプルながら個人的に思い入れの強い品種を紹介しました。