アジサイ

常緑アジサイ「八丈千鳥」の晩秋|2020年秋

一年中楽しめるアジサイの魅力

 花物の園芸植物としては一番好きな植物はアジサイです。「ブログ開設にあたり」にも書いた通り、園芸を数10年続けている中で、途切れることなく育てている植物は、アジサイのみです。アジサイの最大の魅力は間違いなく多様な花だと思います。
 一般的なアジサイを大別すると、

  • ヤマアジサイ
    小型種で、額咲きが大半
    日本や台湾等の山間部に自生
    北海道等の北部に自生するエゾアジサイも近い種
  • ホンアジサイ、ガクアジサイ、西洋アジサイ、ハイドランジア
    大型で、手毬咲きの方が一般的
    ガクアジサイは海浜性の分布
    ハイドランジアは、山間部のヤマアジサイと海浜近くのガクアジサイの交配種
    ハイドランジアは、毎年、多数の新品種が作出されている
  • アメリカノリノキ
    北米原産で、アナベルが一番有名な品種
    カシワバアジサイも同じグループ
  • その他・・・タマアジサイ、コアジサイ、コンテリギ、ツルアジサイ、ノリウツギetc

 コリンマレー著のアジサイ図鑑を見ていると、アジサイ属Hydrangeaとして、多数の節、科に分類されていますが、普通に植物を楽しむ観点では、最初の3種類で十分だと思います。残りの各種も大きくはアジサイに属しますが、花物として、特出した魅力を感じません。
 「ヤマアジサイ」「ガクアジサイを含むハイドランジア」「アメリカノリノキの代表種のアナベル」の3種を、趣味者として鉢植えで楽しむ観点で比較すると、

  • 花を楽しむ
    派手で最新の花はハイドランジア
    楚々とした和の趣はヤマアジサイ
    巨大な花はアナベル
  • 葉を楽しむ
    ヤマアジサイ、ハイドランジアは数種類の斑入り葉あり
    基本的には落葉性だが、ガクアジサイの一部に常緑性の品種あり

続いて育てる観点で比較すると、

  • 夏の水やり
    ヤマアジサイが、水切れダメージ大で、水腐れもしやすく、最も世話が大変
    ヤマアジサイ、ハイドランジアは花芽見込み枝を水切れさせると翌年の開花数減
  • 日当たり
    花を咲かせる点ではすべて日当たりが必要
    ヤマアジサイが最も直射日光に葉焼けのダメージを受けやすい
  • 開花のための剪定
    基本は旧枝咲きのため前年の適正な剪定がマスト
    アナベルは新枝咲きのため、剪定が楽
    ガクアジサイの一部には、四季咲き性あり
  • 株サイズ
    ハイドランジアやアナベルは巨大化しやすい
    小さく育てるならヤマアジサイがベスト
  • 冬越し
    ヤマアジサイ、ハイドランジアは枝のみの貧相な株姿
    ガクアジサイの一部は、常緑で冬越し
    アナベルは根元から剪定が可能で、株姿を調整可能

 長々と書きましたが、それぞれに長所と短所があるので、好きな種類を選べばいいかと思います。
 私は、数10年のアジサイ栽培の中で、真紅の花色に魅せられたヤマアジサイ『紅』に始まり、現在は、常緑四季咲きで花形が変わるガクアジサイ『八丈千鳥』に落ち着きました。
 母の日の季節に発売される新しいハイドランジア系のアジサイはとても魅力的です。ただ、豪華すぎるがゆえに飽きてしまう、次の最新品種に埋もれてしまうと感じます。最近では、『万華鏡』、『衣純千織』『寿』などは一見して凄い品種だと思いますが、10年間育てるとするとうーん、、、と思います。同じ品種の花を長く育てていく時に選ぶ品種は、結局、シンプルな花になる気がします。
 今回は、大好きな八丈千鳥を含む数品種のみが持つ常緑四季咲き性についてです。一般的な要望がないのか、この切り口では、あまり新品種が出ていないように思います。

アジサイ 「八丈千鳥」

 その名の通り、伊豆諸島の八丈島で発見されたガクアジサイです。他に類を見ない極細弁の八重額咲きの花です。有名な細弁のアジサイにダンスパーティーがありますが、ダンスパーティーと比べても断然、八丈千鳥の方が細弁になります。常緑四季咲きという特殊な性質に加えて、装飾花の花形が時期によって変わるという特性もあります。派手な花色を競い合う最先端のアジサイとは別の切り口で凄いアジサイであり続けています。

八丈千鳥の花形

 季節によって本当に花形が変わります。一番印象的な花形は、春から初夏の開花初期の極細弁に感じます。

アジサイ八丈千鳥

アジサイ「八丈千鳥」4月末の花形

アジサイ八丈千鳥

アジサイ「八丈千鳥」6月末の花形

アジサイ八丈千鳥

アジサイ「八丈千鳥」8月末の花形

 写真に挙げた8月末の花形は少し皺が寄った花弁になっていますが、実際は、皺がなく綺麗に開花します。四季咲きとして、秋や冬に咲く花形は、8月末の花形、すなわち極細花弁の時期に比べて幅広の花弁になります。

八丈千鳥の耐寒性(冬越し)

 私がこのアジサイと出会ったのは、10年以上前の200?年の京都府舞鶴市の自然文化園で開催されたアジサイ展の展示です。同じくアジサイが好きな母と二人で訪れて、多数の展示株の中で、ずば抜けた存在感を示していたことを覚えています。展示会の翌年に大手の種苗メーカーより販売されたのを知り、すぐに購入し大切に育てて、現在は巨大株(42cmΦのプラ鉢入り)になっています。

アジサイ八丈千鳥

アジサイ「八丈千鳥」10数年育成の巨大株

 八丈千鳥の他品種にない特別な性質の常緑と四季咲きは簡単には充分に発現しません。育て始めた頃に、冬に葉が落ちる、、、四季咲きしてくれない、、、とがっかりしていましたが、ある程度の大株になってから、この性質は発揮されます。
 耐寒性=落葉せずに常緑で冬を越すには八丈島の気温に近い15℃以上必要と言われています。しかし、大株になると、2月の最低気温は5℃以下になる大阪の冬を落葉せずに、枯死する心配なく冬を越してくれます。ただし、実家のある兵庫県三田市では、冬の最低気温が大阪より数度低く、8~10号鉢程度に大株にしていても落葉し、枯死するダメージを受けることが何度かありました。また、大阪と兵庫県三田市の中間くらいの寒さになる兵庫県加古川市では、大阪で育てているより落葉は多いものの、枯死しそうになることなく元気に育っています。
 経験的には、八丈島の気温に合わせなくても、大株に育て上げれば、西日本の平地で十分に常緑性を保ちます。北日本や西日本の山間部では、株サイズによらず、寒冷紗を巻く等の防寒対策をする方が安全です。
 11月末のベランダのアジサイエリアを見ると、数株の葉だけ、青々とした緑葉が見えます。赤丸が紹介している八丈千鳥、黄丸が伊豆諸島の三宅島で発見された三宅常盤(また紹介します)、そして白丸が八丈千鳥ベースに作出された泉鳥に当たります。この後、1か月も経つと、もっと差は歴然とします。

アジサイ八丈千鳥-三宅常盤-泉鳥

11月末の庭のアジサイ

八丈千鳥の四季咲き性

 次に、常緑に続く特別な性質の四季咲き性です。真夏の花に比べると、花弁数は少なくなりますが、きっちり四季咲きを示します。秋、冬の芽先を見ると、何点かの花芽が見られます。先に記載した通り、秋、冬の花は花弁が太めの花形になります。

アジサイ八丈千鳥

アジサイ「八丈千鳥」11月末の花芽

 四季咲き性を促進させるために、室内栽培をしたことがありますが、大きくは花数が増えませんでした。室内栽培とはいえ、朝晩は10数℃になりますので、この程度の栽培温度域では、大幅に四季咲き性が促進されないと言えます。秋、冬にもたくさん開花させられることは大きな魅力になりますが、大阪での屋外栽培、屋内栽培によらず、現時点では秋~冬に数輪咲く程度になります。
 次回は、冬に開花した時にでも八丈千鳥の記事を書きたいと思います。

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