ヤツデの楽しみ方
ヤツデは常緑で、耐陰性、耐寒性が高く、とても育てやすい植物です。肥料をやらなくても水さえやっていれば育ちますし、夏場の多少の水切れにも耐えてくれます。特に気にするべき病気や害虫も無いと思います。天狗の団扇と言われる特徴的な葉の形が魅力的ですが、緑葉の普通のヤツデだと、田舎の庭先にどこででも植えられており、特段の観賞価値は感じられません。
私の知る限りでは、ヤツデの園芸品種は数品種だけと思います。品種の特徴は葉のみであり、花の変異は知りません。ツワブキが、葉の形・斑の入り方から花の種類に至るまで、多様性があり、観賞・収集価値が高いことに比べると、やや物足りなく思います。しかし、ヤツデの品種は、どれも大変、特徴的で綺麗な葉であり、1、2種類は庭に置いて観賞する価値が十分にあります。
今回は、ヤツデの花が満開でしたので、花に合わせて、持っている4種類のヤツデを紹介します。
ヤツデ 叢雲錦と白覆輪
叢雲錦を初めて入手した10年前には、稀少な品種で、数万円と高価でしたが、今では入手しやすくなりました。中斑が安定に入る綺麗な葉です。2株持っているのですが、中斑の入り方、色合いが明らかに異なります。叢雲錦でも株の間で、個体差があるようです。
仮に、叢雲錦(A)と叢雲錦(B)とすると、(A)の中斑は黄~乳白色の明るい斑に対し、(B)の中斑は黄緑色が強くなります。また中斑の面積も、(A)は一般的な中斑の範疇に対し、(B)の中斑はかなり広範囲に中斑が入り、ヤツデの裂けた葉先に緑が少し残る程度です。
特段の面白みは無いですが、叢雲錦(A)の花です。(A)も(B)も花は全く同じです。
次に、この叢雲錦の元になった品種と言われる白覆輪のヤツデです。明確な名前は無いようです。叢雲錦は、この白覆輪のヤツデの芽変わりと言われます。
葉痛みが酷かったので、下の方の小さな葉の写真です。花も咲いていますが、普通の白花で何の変化もありません。
ヤツデは常緑なのですが、年中、綺麗な葉を保つのが難しく、晩秋から冬にかけては、葉が痛んだ状態のままで、しっかり株に付いているので、あまり綺麗なものではありません。ただ、その分、春の新葉の瑞々しさは格別に感じられます。
この系統の品種としては、白覆輪のタイプだけでなく、黄覆輪のものもあるようです。ヤツデは株元から叢生するように、シュート(不定芽)が出てきますが、白覆輪が黄覆輪になったり、中斑になったものは見たことがありません。全斑の真っ白の葉は時々、出てきますが、葉緑素が完全にないので、当然、元気に生育を続けられません。
ヤツデ 紬絞り、スパイダーウェブ
入手しやすいヤツデとしては、もう一つ「紬絞り」「スパイダーウェブ」があります。実家の兵庫県には、地植えされて大きくなった「紬絞り」がありますが、写真を撮り忘れていました。。。
紬絞り/スパイダーウェブは、葉の全面から、特に葉先につよく、霜降り上の白斑が入るものです。白斑は、強く入って真っ白に近い葉になるものから、綺麗な霜降り状に入るもの、殆ど入らず緑葉に近いものまで、同じ株内でも不安定な発現になります。通年芸なら、間違いなく、叢雲錦と同じくらい綺麗な芸だと思います。ただ紬絞り、スパイダーウェブは、新葉に強く入って、葉の老成とともに消えていきます。別でヤツデの種まきの記事も書くつもりですが、叢雲錦が実生で中斑の特徴が遺伝しないのに対し、この紬絞りの斑は実生で遺伝しやすいです。叢雲錦の斑が遺伝性のないキメラ斑で、紬絞りの斑が遺伝性のある非キメラ斑になるかと思います。
ヤツデ 叢雲錦改(仮)
叢雲錦改は私の勝手な名づけです。。。叢雲錦の中斑の部分が、葉全体に細切れになって緑葉と混じり合うようです。
葉のアップを見ると、叢雲錦には無い複雑で細かい斑の入り方が分かります。通年芸なので、紬絞りと違って、一年中、斑を楽しめます。ただ、花はやっぱり変化ありません。普通の白花です。
ヤツデ 銀乗り三光斑
こちらも叢雲錦改と似ているように思いますが、斑の色が黄緑でなく、銀色が強くなります。
2,3年前に入手したもので、我が家では最も若いヤツデです。11月の晩秋の葉は仕方ないにしても、春先の葉でも、葉がカールしたり、皺くちゃになりやすく、綺麗な葉の展開が見にくいように思います(もう少し立派な株になった時点で再確認します)。もちろん通年芸になります。花は、やっぱり普通の白花が咲いてくれました。
ヤツデ 春の新葉
ヤツデは常緑なので、年中葉を楽しめます。しかし、実際は、春先の新葉が鮮明な葉色で瑞々しく綺麗な代わりに、晩秋から冬の葉は落葉せずにくっついている感じで、あまり綺麗ではありません。今回の写真は11月の開花期のもので、あまり綺麗で無い葉ばかりです。。。来春の新葉で新たに記事を書くつもりですが、昨春の綺麗な葉の写真を比較に。
これは叢雲錦(A)になります。
これは叢雲錦改(仮)になります。
これは銀乗り三光斑になります。新葉もやはりカールしています。。。
どれも同じ株ですが、葉の綺麗さは断然、違うと思います。やっぱりヤツデの葉を楽しむのは春の新葉がベストです。