オブリクアの一括挿し木
前記事「モンステラ・オブリクアの一括挿し木」で、長々と伸びたランナーを細切れにして、まとめて挿し木しました。一本ずつ丁寧に挿し木する一般的な挿し木と違うので、勝手ながら『一括挿し木』と付けました…。今回は、挿し木して一か月後の状況報告です。
オブリクアはモンステラの一種です。確かに、オブリクアは、同じモンステラの一種のマドカズラと同じような縁が切れ込まない穴の開いた葉です。しかし、デリシオーサやマドカズラと違って、葉だけでなく、ランナーを展開するという明らかな違いがあります。他のモンステラの種類で、ランナーを伸ばすタイプは全く知りません。ランナーを切り刻んで作った一括挿し木の状況と、ランナーを切り取られた親株の成長を確認します。
前記事の繰り返しですが、挿し木前の親株です。
マドカズラのような葉が2枚展開した後、ひたすらランナーが伸びだしました。。。葉が展開しなくなりました。。。他のモンステラにはない株姿であることはよく分かります。ただランナーだけが伸びても、観葉植物として楽しめないのです…。
一括挿し木の一か月後
真夏の一番暑い時期の挿し木で一か月経過した状態です。水苔内に細切れのランナーを入れて育てています。2箱で育てており、一つは普通にふた無しの開放状態で、もう一つは蓋を軽くかぶせて育てています。蓋を被せることで湿度の変化を少なく、一定湿度を保ちやすくすることの効果を狙っています。高温になりすぎると困りますので、密閉はしていません。
まず普通にふた無しで育てた方です。
青丸で囲った芽がピンとしています。明らかに元気そうです。一方で、水苔にくるまれたランナー挿し穂の状態が気になります。普通の挿し穂は成長点を確認して、成長点に光を当てるように挿し木します(要は、土に挿し穂枝の半分を埋めて、半分は土から出すということ)。しかし、成長点も分かりにくく、小さすぎるランナー挿し穂なので、水苔に包んで埋め込むようにしています。ということで、いったん、全ての挿し穂を水苔から出しました。
上段、中段、下段でサイズごとに分けています。下段の小さいのが1cm程度。上段の大きいのが4~7cm程度です。まず全挿し穂が腐っていないことに安心です。水苔に「くるむ」ことで水腐れしないかが一番の注意点でしたが、大丈夫のようです。通気性の良い水苔を使ったことも腐らなかった一因と思われます。もう一つの関心の挿し穂の1カ月の成長度合いです。箱から飛び出して目に付いた長い挿し穂に加えて、長めのランナー挿し穂を用いた上段の3本は水苔に絡まっており、発根が始まっているようです。一方で、中段、下段の比較的、短い方のランナー挿し穂は全く発根していないようです。
次にふた有りで育てた方から、挿し穂を取り出しました。
水苔に絡まる発根の意味では、1挿し穂だけです。この時点では、わざわざ追加したふた有りによる湿度維持・湿度安定化の好影響が表れていないようです。
取り出した挿し穂をよく見ると面白い変化が数本に見られました。挿し穂の部分的な黄変です。黄変部は枯れていると思います。
先端側が黄変しています。しかし、黄変が進行して枯れてきている雰囲気はなく、むしろ黄変部の左の鞘の中に芽がピンと立ち上がって元気に見えます。もう一本も見てみます。
こちらは根元側が黄変しています。しかし、鞘からの芽はやはりピンとしており元気に見えます。継続観察しますが、黄変は枯れるという悪い変化というより、余計な部分を枯らして鞘からの新芽成長に生育を集中させているように感じます。植物が不要な部分を自ら枯らすのは生育するための自然な現象と思います。最後に、確認した挿し穂を再び水苔に包まれるように戻して、一括挿し木を再開しました。
オブリクアランナーの一括挿し木の1か月後の観察結果は、一言では、『枯れていないことが分かった』になります。同じモンステラの一種とはいえ、デリシオーサなんかに比べると、あまりに極細のランナーなので挿し木生育が心配でしたが、今のところ、他のモンステラと同じ管理で特段の問題は無いようです。ふた有り/無しによる湿度安定性や、挿し穂の長さの、挿し木への影響は、晩秋あたりに3カ月程度の生育を見て、再確認してます。
オブリクアの親株(ランナーを切られた側)の一か月後
次に、挿し木の方ではなく、挿し穂としてランナーを切り取られたオブリクアの親株の方を確認します。ランナーを切られたら、またランナーが伸びるのか?それとも葉の展開が始まるのか?が知りたいところです。まず一括挿し木に使用した2つの親株の本記事最初に紹介した株です。
ぱっと見では詳細な生育が分かりませんので、株元をアップします。
赤矢印で示した元の古い葉に対し、青矢印で示した2つの芽が上がっています。左側の芽は明確に葉を展開し始めています。写真で分かりにくいですが、右側の芽もランナーではなく葉のようです。
次に、もう一つのオブリクアの親株の方です。
こちらは、明らかに新葉の成長が見られます。株が大きいだけに、カット後の生育も早いようです。拡大すると、古葉が枯れ始めて、代わりに2枚の葉が展開していることが分かります。
2株の共通する観察結果から、ランナーを切られると、ランナーを伸ばそうとしていた生育力が葉に移って、葉の展開を促すことが分かりました。たった1か月でどちらも2枚の葉を展開しようとしていますので、葉が生い茂るオブリクアを仕上げる時のヒントになるかと思います。一方で、葉ばかり茂るところから、ランナーを伸ばさせるには?については、継続観察しながら調べたいと思います。もちろん、「葉を展開させる」or「ランナーを伸ばさせる」をコントロールするには季節因子もあるかと思います。今回は真夏のランナー切断に対する結果です。しかし、「ランナーを切る⇒同時に挿し木をする⇒切る時期は挿し木の適期の初夏から初秋」となるので、概ね、今後も今回のデータを基に結果の再現を確認すればよいかと思います。真冬にランナーを切って、挿し木をする人はいないと思いますので…。