パッションフルーツはクダモノトケイソウのこと
トロピカルフルーツとして有名なパッションフルーツは、日本語では『果物』時計草(クダモノトケイソウ)、英語名ではエドュリスになります。
パッションフルーツの花
パッションフルーツ=クダモノトケイソウの日本語名は花を見れば一目瞭然です。3本の雌しべを長針・短針・秒針に見立てると、まさに時計に見えます。中心部が紫で外周部が白の細いたくさんの花弁が、丸い時計盤にもなっています。綺麗かどうかはともかく、他に類を見ない面白い花です(本記事内に紹介する様々なトケイソウ科の花も参照ください)。

パッションフルーツ「サマークイーン」の花

パッションフルーツ「サマークイーン」の花
開花期は、初夏の6~7月と初秋の9~10月になります。開花した花の受粉に成功すると、初夏の花の場合は2~3か月、初秋の花の場合は3~6か月程度で、熟して食べ頃のトロピカルフルーツになります。秋の実は、熟すのに時間がかかりますので、果物を楽しむには、6~7月の花がベストです。6~7月の花を受粉させ、8~10月に果物を食べるのが基本パターンです。
花は、開花期中にコンスタントに咲き続けるのではなく、連続する数日のピーク日に一気にたくさん開花しやすいです。果物を食べるには、数日のピーク日の昼から午後3時くらいまでは、せっせと受粉作業することがマストです。蕾は分かりやすいので、開花日は簡単に予想できます。
パッションフルーツの実
パッションフルーツの実は、いわゆる果物のパッションフルーツのことです。最近では、普通のスーパーでも売られていたりします。甘酸っぱいトロピカルな香りが特徴の果物です。種の周りのジャム状の果肉を種ごとバリバリ食べます。
ベランダの鉢植え植物の楽しみ方は、「葉を楽しむ」、「花を楽しむ」、「実を楽しむ(食べる)」になりますが、私のパッションフルーツの楽しみ方は、美味しい果物を食べることです。
パッションフルーツ(クダモノトケイソウ)を含むトケイソウ科は500種類以上の多種類があります。本ブログでは、基本的に、果物として育てられる品種を対象としています。一般的に入手しやすいパッションフルーツの品種は、紫色の果皮の「サマークイーン」「ルビースター」です。さらに改良された品種として、果実が大きいもの、果皮の色が異なるもの、味の異なるもの、結実性が異なるもの、、、と多種類あります(明確な品種名はあまり無いようです)。
一番、気になるのは結実性です。自家受粉で結実する品種と他家受粉で結実する品種がありますので、品種名が確実な苗を入手すべきです。「サマークイーン」「ルビースター」は自家受粉できる品種ですので、安心です。他家受粉の場合は、2種の花の開花タイミングを合わせないといけないので、かなり面倒です。受粉方法は、別途、記事にしようと思いますが、受粉成功時は、たった2日後には小さな膨らみが見えるので、すぐに分かります。

受粉成功から1週間後
自分の庭で育てて、樹上で完熟させたパッションフルーツは、スーパーで買うパッションフルーツとは別物の格段の美味しさです。味だけでなく、果皮の中には、果肉が満杯に入っています。自然落下するまでの完熟時間に比例して、果肉の詰まり方が増えていきます。以前に、台風の風で、熟する前に落下した果実を、長時間放置して無理やり色づかせたことがあります。色づいた果皮を包丁で切ると、果肉が全く無くて唖然としました。しっかり樹上完熟させると、写真の通り、小さい果実でも、果肉の詰まり方がすごいです。

樹上完熟させたパッションフルーツの果肉
完熟パッションフルーツの美味しさを知って以来、夏のグリーンカーテンの中で占めるパッションフルーツの割合が増えています。
パッションフルーツの育て方の注意点
パッションフルーツのを育てる上で注意点は、冬越し(耐寒性)です。
観葉植物は、暖かくなると室外に、寒くなると室内に置いて観賞するのが当たり前だと思いますが、つる植物であるパッションフルーツは同様の対応はしにくいです。つるの処理がマストで面倒ですし、そもそも室内に置くには、観葉植物でないので、見た目がイマイチです。
大阪の都会のマンションで、冬越しする上での対応方法は、2点のみです。
- 耐寒性の強い品種を育てる
- 冬の枯死の保険に、挿し木苗を準備する
耐寒性に強い品種
パッションフルーツに限らず、耐寒性は-15℃や5℃などの温度表記されます。しかし、外で冬越しできるかどうかの境の0~5℃とされる植物は、実経験で理解するのみです。枯死させずに冬越しできるかは、「水のやり方」、「株の成熟度」、「日当たり」、「耐久性(低温に耐えられる日数)」、「暖冬か厳冬か」、そして「同一植物の品種間差」と多数のパラメータが影響しあいます。本ブログでは、同じ人間が、同じ場所(大阪府吹田市のベランダ)で、同じように育てた時の、単純比較により、パッションフルーツの『品種間の耐寒性の違い』を明らかにします。
2020年の冬は、サマークイーンと黄果皮ジャンボと赤紫果皮ジャンボの3種類を比べました。共通条件は、
- 置き場:屋外の中で一日の気温差が少ない玄関前
- 水やり:月1-2回
- 株サイズ:6号鉢で根張り良好
- 冬の気温:暖冬(2020年2月の月別最低気温4.7℃)
になります。結果は、サマークイーンのみ冬越し成功で、黄果皮ジャンボと赤紫果皮ジャンボは枯死しました。サマークイーンの耐寒性は、黄果皮ジャンボと赤紫果皮ジャンボより優れていることになります。引き続き、品種間の耐寒性を比較し、室内に取り込まなくても良い品種を明確化します。もちろん、最終的な品種の選び方は、冬を簡単に越せる耐寒性に合わせて、美味しい果物を食べられるかも含めて決めます。
保険の挿し木苗の準備
植物の増やす方法として、挿し木をマスターすることは、とても重要です。種から増やす方法は特性が変化する可能性がありますが、挿し木はコピーなので、特性変化が基本的にはありません。同様に、接ぎ木の手法もありますが、成功率が高く、簡単に増やしやすい方法は間違いなく、挿し木です。植物種類ごとに差はありますが、基本的な部分を理解して、色々な植物の挿し木に展開できます。ブログの重要テーマなので、色々な切り口で実験する予定です。パッションフルーツは、コツをつかめば、比較的、挿し木が簡単な種類だと思います。
保険の挿し木苗を進めるもう一つの理由は、パッションフルーツの植物の寿命です。樹木や観葉植物のように1年ごとの成長を継続して楽しんでいく植物は、枯らしてしまうと、また小さい苗からになり、大変、残念です。しかし、パッションフルーツの寿命は5年から長くて10年程度です。冬越しに成功し続けても、5年後以降は成長性が鈍ってきます。冬越しに頑張りすぎなくても、挿し木で保険を作っておけば良いだけです。
最後に、パッションフルーツの成長の早さです。適切な日光と肥料と水やりをすれば、挿し木苗でも翌年から、開花と果実を楽しめます。さすがに挿し木翌年から、大量の収穫は無理かもしれませんが、2年後には十分に収穫を見込めます。苦労して大苗の5年株を作らなくてもいいです。挿し木で常に2年苗を2つ作るようにして、小さめの株で楽に冬越しし、夏はたくさん収穫するのもパッションフルーツの育て方の一つの形です。
クダモノトケイソウ以外のトケイソウ科
最後に、クダモノトケイソウ(英語名はエドュリス)以外のトケイソウの紹介です。
クダモノが名前に付かない『トケイソウ』で調べると、アラタ、マリフォルミス、デカイスネアナ、オオミノトケイソウ、モリッシマ、スィートグラナディラ、スィートカラバッシュ、ポペノヴィ、カプスラリス・・・と色々な名前が出てきます。様々な綺麗な(変わった?)花を咲かせるだけでなく、クダモノトケイソウの果実とは少し異なる外観、大きさの果物を実らせる種類があります。
- トケイソウ科の様々な花
- トケイソウ科の様々な花
- トケイソウ科の様々な花
- トケイソウ科の様々な花
- トケイソウ科の様々な花
- トケイソウ科の様々な花
簡単に育てられるのであれば、1、2種類は育てたいなーと思う面白い花です。しかし、冬越しが大変な面倒な植物と考えると、どの種類も花を楽しむことを目的に育てられないのが正直な感想です。
唯一、パーフェクトパッション、最も美味しいパッションフルーツと言われる『ポペノヴィ』だけは育ててみたいと思っています。入手は難しく、オークションで見ていると、種だけでも高額であり、まだ手が出せずにいますが。
最後に、記事の主旨から逸れますが、変わった花を楽しむために手間をかけて育てるのなら、極楽鳥花(ストレリチア)が、断然、お勧めです。一輪咲くだけで、大きな存在感です。花期も長く、優れた花物です。

ストレリチアの花(極楽鳥花)