モミジの楽しみ方
我が家のベランダで、昔から育てている植物の一つにモミジがあります。自分の結婚式で両家の親にプレゼントした植物でもあり、思い入れのある植物です。庭の植物のNo1ではないのですが、No3には入る植物です。
モミジの楽しみ方と言えば、秋の紅葉が真っ先に思い浮かぶと思います。しかし、ベランダガーデニングで紅葉を十分に楽しむのは極めて難しいと、あくまで個人的には断言します。モミジの紅葉を楽しむのは、京都の風情のあるお寺に夜間拝観に行く方が間違いなく良いですね。
ではベランダガーデニングとしてのモミジの楽しみ方ですが、タイトル通りの春のモミジになります。どんな植物でも春の新芽は瑞々しさに溢れていて綺麗ですが、モミジには多様な斑入り、多様な葉形があり、格段に春の葉の観賞価値が高い植物です。モミジの専門店を見ていると、びっくりするくらいの多様な品種があります。中には見分けをつけるのが難しい品種も多々ありますが、玄人しか分からない楽しさでなく、玄人も素人も楽しめる春モミジとして、いくつかの品種を育てています。
イロハモミジ 舞森
最初に紹介するモミジは、結婚式で送った記念すべき品種である『舞森』です。
切り斑でとても大胆に斑が入ります。写真では、白斑から黄斑のように見えますが、実際はもう少しピンク色に見えます。葉の形も異形にならずにモミジらしい形に整っていて綺麗です。
全斑になると葉、枝が枯れやすいのですが、2m近くの大株で力のある株に仕上げていますので、全斑の葉も十分に楽しめます。写真では分かりにくいのですが、全体の株姿は、こんな感じです。身の丈以上あり、剪定が難しいくらいです。
切り斑のモミジを育てていれば分かりますが、不安定な斑入り品種を、斑を綺麗に保ったまま大株にするのはとても難しいです。「緑枝を初夏までに選別して、12月の強剪定時に根元から取り去る」を何年も続けて、現在の株姿に至っています。安定斑の品種はこのような手間は不要ですが、『舞森』は、手間をかけたくなるほどの美しさがあります。
ただし、紅葉は特段の美しさは感じません…残念ながら。『舞森』に限らず、今回紹介する斑入りのモミジの紅葉は、特に綺麗ではないです。
イタヤカエデ 名栗錦
品種の紹介前にモミジの種類の説明です。
里山や神社仏閣で見られるモミジの大半は、ヤマモミジ、イロハモミジ、オオモミジと言われるもので、カエデ科に属するものです。同じカエデ科で、イタヤカエデ、ウリカエデ、ハウチワカエデと少し葉の形の異なるものがあります。モミジと名が付くものから、カエデと名が付くものになると、一般的なモミジのイメージの葉型から少し遠ざかります。
私は普通のモミジの葉型が最も綺麗に感じますが、イタヤカエデ『名栗錦』は葉形云々の前に、斑の入り方が他に類を見ないもので、とても魅力的です。
全斑の緑の斑点が細やかに入ります。この緑の部分のみで光合成をしていると想像すると、あまりに弱い品種に見えますが、モミジの園芸書では「樹勢はさほど弱くない」と書かれています。が、、、私は何度も枯らしています。1株1万円はする高価な品種なのに、、、。
育てる難易度はやっぱり高めだと思いますが、『舞森』と違って斑の入り方は抜群に安定しています。鉢植えで育てていますが、樹勢が強いと感じたことはなく、剪定を殆どしていません。新しい枝が何本か発生し、そして毎年何本かの枝が枯れてしまいます。毎年、差し引き0となり、さほど枝数が増えません。剪定したくなるくらい鬱蒼とした大株の『名栗錦』にしたいのですが。
イタヤカエデの葉の形は、イロハモミジの典型的なモミジの葉から少し大きな葉になります。イタヤカエデは、『名栗錦』以外にも、「星宿」「常盤錦」といった魅力的な品種があるのですが、入手先が見つかりません…うーん。
オオモミジ 藤波錦
次はオオモミジの『藤波錦』です。最大の特徴は、真っ赤な切り斑です。地の葉色が褐色で、コントラストが抜群に綺麗です。もし地の葉色が緑だと、育てていなかったと思います。
こちらも『舞森』と同じく斑の管理が必要ですが、『舞森』と比べ物にならないくらい、斑の維持が難しくなっています。斑の強さは株の個性と思いますが、その観点では、あまり素性が良くない株であったのかもしれません。この株も『舞森』と同じく、枝の選別を何年も繰り返していますが、『舞森』ほど大株&多数の斑入り葉にできていません。
全体の株姿はこんな感じです。
斑が全面真っ赤の全斑になり、全斑の枝は大変枯れやすいので、株全体の斑の維持が難しいです。褐色葉と赤葉の2色葉に見えて綺麗なのですが、、、。
なお『藤波錦』は褐色葉のオオモミジ「藤波」に赤の切り斑が入った品種です。購入時は、きっちり赤斑を確認して購入しないと、一年でただの「藤波」になってしまうので要注意です。失敗談として、オークションで『藤波錦』の大株が出ていたので、喜んで購入しましたが、2年も育てると、観賞価値があまりない「藤波」になっていました。『名栗錦』を何本も買ったり、『藤波錦』を「藤波」にしたり、、、とモミジでは結構、失敗しています。
イロハモミジ 秋篠錦、白雪の舞
再びイロハモミジに戻ります。まず『秋篠錦』です。白から桃の覆輪斑です。
よく似た品種で「限り錦」がありますが、覆輪斑が広く入るので、断然、『秋篠錦』の方が綺麗です。幅広の覆輪斑は安定斑で、大株で見ると、とても華やかです。
続いて『白雪の舞』です。
名の通り、白斑が入ります。ピンク斑や黄斑、クリーム斑ではありません。新葉の時点から、きっちり白斑になるのは珍しいように思います。安定斑とされており、枝も薄黄色の斑の色が入って綺麗です。が、写真でも分かる通り、葉形は変形しがちです。。。大株で見るとこんな感じです。
この品種も斑入り枝が枯れやすく、なかなか大株になりません。ただし、安定斑とされるだけあって、真緑の葉ばかり出ているところから、突如、白斑の葉が出てきます。全ては真緑になることは無さそうなので、品種の特性を維持する点では安心です。
イタヤカエデ? 無銘品
最後の品種はオークションで入手した無銘品です。葉の形から、イタヤカエデと推測されます。葉の一部がゴマ斑状に見えます。
大好きな『名栗錦』の斑が葉の一部に入った感じに見えます。しかし、『名栗錦』と比べると、残念ながら、斑の部分の鮮明さが劣ります。銘のある品種はやはり綺麗だなと思います。
斑入りモミジの育て方
美しい春モミジを観賞できる斑入りのモミジをいくつか紹介しました。最後に、斑入りのモミジを綺麗に育てるポイントを紹介します。
他の斑入り植物にも共通するポイントで当然とも言えますが、
- 直射日光に当てないこと
モミジは、日陰でも十分に育つ植物ですし、あまり直射日光にあてて元気に育ちすぎると、鬱蒼としすぎます。少しくらい徒長したモミジの方がモミジらしいと思いますし。
で、ぜひ紹介したい他の植物にはあまり当てはまらない重要なポイントは、
- 雨に当てないこと(特に春先の新葉)
雨に当てると、斑入り葉は大変傷みやすいです。品種による強い、弱いは多少ありますが、基本的には雨に当てない育て方がマストです。雨に当てずに育てるには、地植えができませんし、屋根のあるベランダが必須になります。我が家では、屋根のある少し狭いベランダと、屋根のない広いバルコニーがありますが、全てのモミジは屋根のあるベランダに一年中置いています。ということで、斑入りモミジを楽しむには、ベランダガーデニングこそがベストだと考えます。あまり大きくすることばかり考えずに、小さな鉢で多数の品種を育てるのがいいのかなと思います。