ツワブキ 本芸の考え方
ツワブキの前記事は1年前の12月の紀州獅子でした(ツワブキ紀州獅子の開花)ので、その続きから久しぶりに書きます。今回のテーマは、本芸はいつ表れるか?です。
ツワブキを収集しだすと、どんどん珍しい品種を収集したくなります。ツワブキはどれだけ収集しても、尽きることなく珍しい品種が出てくるので、趣味としては良い植物種類だと思います。ただ、珍しい品種になるほど、一年中明瞭な芸を見せる通年芸ではなく、特定の時期に本芸を示す品種が多くなるように思います。そのため、本芸をきっちり見極めて良い株を入手することが大事になります。本芸がくっきり表れた大株を入手する時は間違いないです。しかし、オークションなんかでは小株で入手することもあり、小株で本芸が表れるか?、すなわち確かな品種であるか?を判断することは、収集において、とても重要です。信頼できる入手先から入手することが大事ですが、入手先=相手任せでなく、自分で目利きして入手できるようになりたいものです。
で、どう目利きするかですが、品種ごとに本芸を示す時期を理解して、品種が確かなものであるかを確認の上、入手することです。植物の芸の出方について、端的に分けると、次の4択になります。
- 品種の本芸時期に、本芸を示していない
- 品種の本芸時期に、本芸を示している
- 品種の本芸時期以外に、本芸を示していない
- 品種の本芸時期以外に、本芸を示している
簡単なのは、もちろん2と4です。本芸を示しているのなら、本芸時期に関わらず入手してもよいと思います(もちろん値段次第ではありますが…)。目利きするのは、1と3です。本芸時期を知っているのであれば、3は値段次第で購入すべきです。本芸を示していない品種は安価に入手しやすいので、お得に入手できるかもしれません。一方で、間違いなく購入すべきでないのは1です。もちろん小株のために本芸を示していない可能性はありますが、せっかく大切に何年も育てたのに、期待する芸を一切示さない場合は、一番がっかりします。私自身も何度もそのような経験があります。育て方も一因かもしれませんが、特別な育て方をしなければ芸を示さない品種なんかは育てたいとは思わないですね。
「紀州獅子」葉芸の変化
紀州獅子の葉芸は、形態芸「内巻き・波・獅子葉・子持ち」と斑入り「黄斑・覆輪くずれ」を併せもちます。本芸を発現する時期は初夏から晩秋とされています。今回は、紀州獅子の本芸を示す終了時期を明確にするために9月からの葉の変化を追いました。
まず、本芸の葉です。写真を撮った9月11日時点で大きく葉が展開しているので、芽が出たのは、本芸を示す時期に当たる晩夏になります。
本芸葉1が一番分かりやすい見事な芸を示しています。子持ち葉にも黄斑の覆輪を示しています。本芸葉2,3も大きく黄斑の覆輪が出ています。白覆輪は多品種でもよく見ますが、明確な覆輪の黄斑は珍しいと思います。
次に、同じ9月11日撮影時の新葉です。
左の葉に微かな黄斑の覆輪が見られていますが、右の葉は、至って普通の葉です。斑も無ければ、形態芸もありません。
最後に2か月後の11月27日の株姿です。育てている2株の写真です。どちらも植え替えして2,3年は経過した大株です。
11月になると、殆どの葉が普通の緑葉で、形態芸と斑入り芸を併せもつ銘品「紀州獅子」とは思えない株姿です。ついでに9月の本芸葉1の2か月後の状態です。
傷んだ斑入り部分があり、観賞時期は超えてしまっています。周りの新葉は綺麗な緑ですが、殆ど芸を示していないことが分かります。
「紀州獅子」の本芸時期の確認
今回、初夏~晩秋が本芸時期とされる「紀州獅子」の葉芸の発現を追いました。芸の開始時期は確認できませんでしたが、芸の終了時期は、晩秋ではなく初秋と確認できました。今回の確認は、株分けで増殖した同一個体群になりますので、別の「紀州獅子」の個体群と比較しないと、もちろん断言はできません。ただし、一般的にはツワブキの芸は、春芸、秋芸が多いのですが、紀州獅子は、秋芸というより(珍しい)夏芸と思っていた方が良いと思います。
最初の芸の見極め方4択を考えると、一番分かりやすいタイミングは初秋の株です。初秋の株で、本芸葉が無ければ、入手しない方が良いと思います。晩秋から初春あたりは明確な芸を示していなくても品種の特性なので、購入してもいいかもしれません(もちろん値段次第ではありますが…)。